ロシア・北サハリン釣


2007年 6月中旬

釣行と執筆 小野寺俊弥さん (青森)


今年のロシア(極東地域)の釣り事情は、
5月後半に非常に大変な政治的問題が起こり、
日本からのシーマを求めてロシアに行く予定の者達全てを拒むこととなった。

私達も15年以上もロシアに通い続け、
ロシアからも強力な支援及び信頼を得ている方を通じての交渉も、
あまりにリスクが多すぎる・・・とのことから、
出発数日前にして急遽目的地を変更。

サハリンへと向かうことにした。

ただし、サハリンと言っても、
北緯50度線以南の最近フィッシングツアー等も行っているエリアとはまったく別世界の、
北緯50度をはるかに北上した、まさに秘境北サハリンへと行くことになったのである。

向かう川は通常の4輪駆動車では到底行くことは出来ないとのことから、ヘリも考慮したが、
最終的にはロシア軍の協力を得て、軍用車での移動となった。

しかし、出発してからが大変だった・・・

最初の1時間くらいは舗装路だったが徐々に砂利路となり、
さらにデコボコの悪路へ・・

約9時間後にスミルネィフ(気屯)で軽く休憩。

現地時間で深夜1時を軽く過ぎていたと思う。

翌早朝に移動再開・・・。

ポペジノ(古屯)で北サハリンの川及び魚の監視をしている役人?
(かなりの権力を持っているようで、
乱獲等の自然破壊をしようとして進入してくるマフィアからその地域を守る目的であれば、
自分の判断で川にかかっている橋を壊すこともできる・・らしい)
も同乗し、現地へ向かった。

そこからの道がヤバイ・・
道か?という場所の連続で、挙句の果てには川の中が道になっている・・。

さすがに普通のジープ等では来れない訳だ。

  
※これはれっきとした道の中です・・・・
(_;)

そんな道のりをひたすら走り、
車の振動で体が崩壊するのではないかという心配のピークを迎えた頃に、
やっとで目的地に到着。
ユジノサハリンスクから車に乗って、
23時間が経っていた・・・。




もう現地時間で午後3時を過ぎていたが、
これくらいの緯度になると、白夜に近い状況なので、
日が暮れるのは午後
9時過ぎるため、まだ釣りの時間はある。

いったい何が釣れるのか・・・。

ガイドとして同行してきたリンさんも、
前にこの川に来たのはもう
10年以上前のことで、
今の状況はわからないとのことだった。
(それって、ガイドになってないのでは・・?笑)


とりあえず準備して釣りをしなければ・・
と思い視線を落として最初に遭遇したのがクマの足跡
(_;)




その日は日没まで、川の様子を見ながら釣りをした・・・。
アメマスと小型のイトウは釣れるものの、狙いの大型シーマとBigタイメンとは会うことが出来なかった。


翌朝からはさらに広範囲を歩いて、
ポイントを探りながらじっくり攻めた。
海までも非常に近いことから、潮の影響はかなり受けているようだ。

どんなに魚が見えていようが、食わない時間帯には口を使おうとしない・・。



しかし、開始してそうそうにひったくるようなバイト・・・
シーマだ。

3日目にしてやっとシーマが顔を出してくれた。
昨夜になって、やっと海からの遡上が始まったのだろう。
前日まで
1匹も居なかったシーマが立て続けにヒットしてくる。
なぜか全長は60pまでと、やや小さいがとにかく太い・・。

日本の同サイズのサクラマスより断然重量があるのだ。やっとの本命に心が躍る・・・。




その日はカラフトマスも遡上開始で、前日とは状況が一変。
次々と、ヒットの声があがった。
午後になり、さらに遡上量が増えてきて、魚影があちこちに見えるようになったが、
潮の関係か、ある時間からピタリとヒットが止まった。

明日早朝はかなり熱いファイトになるだろうと信じてその日は終了。


しかし、翌日はなぜかガイドが急遽川を移動すると・・・・。
これだけ明日の爆釣が予測できる川を後にして一体どこへ????と思って、ここへ残ることを強く言ったのだが、
結局地元のガイドの意見に勝てるわけも無く移動・・・。

ある部落へ到着した。


日本人は始めて来たと言われたが、
もう日も暮れて周囲の状況も把握できないため、軽い不安を抱かずにはいられない。
とにかく、なんとも言えない不思議な雰囲気が漂う場所だ・・ということは感じた。

現在は
4家族18人が住んでいて、
これからの鮭・マス漁の時期には
100人まで住民が膨れ上がるという。
捕った魚は卵をとり、それをマフィアが買い取るとのこと。
翌日聞いた話では、この卵目的の乱獲が、
ロシア本土とサハリンでは本当に大きな問題になっていることらしい。

 

この部落のすぐ下に川があるのだが、
ここでも数日前からシーマが遡上を始めたばかりとのことで、
かなりのヒットがあった。

しかし、魚影が濃いといっても、
きちんとしたポイント判断と的確なキャスト及びルアー操作をしないと、
本当に釣果に大差が出るシビアな状況ではあった。





いよいよ帰る日がやってきた、
何かトラブルが起こった場合を想定してのかなり余裕を持った出発となった。


時間的に余裕があるので、順調に帰ることができれば、
ユジノサハリンスクではフライト時間までゆったり観光等できる予定だったが、
やはり事件は起きた・・・。

なんと、あまりの悪路に軍用車も悲鳴をあげ、
ついに前輪のベアリングがボロボロになり
オイルは噴出し、
走行不能の状況になってしまった。

それからなんと、18時間ものビバーク・・。
衛星電話もなぜか持ってなくて、
外部との連絡手段が全く無いという、
あり得ない現実に笑しか出なかった。



そして、そこからの脱出?
救助?の話はここでは書かないことにする。

さらにあり得ないことの連発だったので・・・
(*_*)(笑)


とにかく18時間後に別な車が到着。

もちろん乗る予定の飛行機には間に合うはずも無く・・・
結果的には予定より1日長くサハリンに滞在した後、
なんとか無事ハバロフスク経由で帰国。
本当に大変な釣行であった。





今回は本当にルート開拓としての意味が強い釣行だったが、
北サハリンは想像以上に未開拓で、厳しい環境であった。

道という道も砂利のフラットなら最高に条件が良く、
山間部や河川に向かう道のほとんどが、もの凄いダート・・・いや、
あれが道と言えるのか。

さらにマフィアの行く手を遮るための、監視官による予告無しの橋の爆破?・・・
等で、道が寸断されていたり・・と、
我々の普通の感覚では納得出来ない現実が待ち受けている社会だった。

もしも、今後行きたいという人がいれば、
多少のアドバイスは出来るが、よほど覚悟して行って欲しい。

今回の河川も本当に魚影も濃く、
イトウの1m50pを遥かに越す魚体も確認できたが
(目撃のみだが・・)、

本当に絶妙なバランスで自然が維持されていることを実感してきたので、
河川名等は言えない。

あと10年もすれば、サハリンも舗装路が整備され、
この秘境も多くの釣り人が訪れるようになるかもしれないが、
それまではそっとしておきたいものである。




今回のサハリンは、魚影はかなり濃かったが、
どんなルアーでも、どう投げてもヒットするなんてことは無く、
きちんとしたルアーチョイスと適切なポイント選びと誘いがあって初めてヒットする・・
というセオリーは国内の川と同じで、
シビアな釣りとなった。

当然同じポイントでそれぞれのルアーに適したアクションを加えても、
ヒットしてくるルアーは数種類だった。

実際各メーカーのさまざまなルアーを使用した結果、
興味深い結果を出してくれたのが、マリアから新発売されたFAKE BAITSと、
ボーグのミノーであった。

もちろん他にも良い釣果を導いてくれたルアーはあったのだが、
今回はこのミノーを簡単に紹介したい。


マリアのFAKE BAITS9cmであるが、とにかく・泳ぎ、バランスの良さに驚いた。
もともと開発コンセプトが究極にバルサミノーの泳ぎに近づける・・・
ということからも、その泳ぎはすばらしく、
かなり激しいトウィッチングやジャーキング、また激流の中で引いても、
水面から飛び出したり、回転したりすることなく、
きっちりと泳いでくれた。

また、その泳ぎを追及するためか
ボディ重量が他メーカーより軽めに設計されているのだが、
実際使用してみるとその飛距離に驚く。

つまり、従来バルサミノーでは難しいとされていた、
飛距離と泳ぎのバランスが高次元で両立されたミノーと言える。

今回も他のミノーで反応が鈍い時に、このFAKE BAITS9cmだけは期待に応える釣果を出してくれたのだ。
しかもこの品質でありながら定価がもの凄くリーズナブルなことが嬉しい。
ただ、ラインナップ上はフローティングのみなので、今後ミディアム〜ディープまで対応するモデルが欲しいところだ。


次はボーグのミノーだが、
このメーカーのミノーはヒット後にフックが本体から外れることにより、
極限までのバラシ減少をもたらしてくれる。

例えば、9cmのリトルジョンはドリーバーデンの反応がすこぶる良く、
数え切れないほどのヒット・・・。
そんな中、私の腕の問題もあるだろうが、スレか何かでバレたのが3回。
すべてフックユニットは外れていたので、
それなりに強い衝撃がフックにあったはずだがバレてしまった。
しかし、数十回のヒットの中でのフックアウト3回は、
非常に優秀だろう。
いや、フックアウトしたのがすべてボディーアタックだけだと考えれば、
口にヒットした場合は、ほぼ100%のキープ力となるのでは・・
という状況だった。


また、飛行距離・姿勢ともに優れており、
狙ったポイントまでストレス無く責めることができた。
特に驚いたのは、ミノーの場合アイのバランスが多少ずれただけでも、
スイミングバランスに大きな影響を与えるのだが、
フックユニットが外れるミノーなのに、
これだけ均一なスイミングバランスを維持できることである。
これはある意味本当に凄いことだと思う。


今回使用してみて、
飛距離・アクション・フッキングのキープ力には改めて感心したが、
逆に気になったのがランディングネットを使用した際には、
通常のミノーよりもネットに絡みやすいことと、
フックユニットを再セットすることの慣れ等で、
手返しの良い釣りをしたい場合には不利となることがあり、
注意・経験が必要と感じられた。

しかし、国内の釣り事情から考えて、
巡り会える貴重なチャンスを逃さない・・
として使用するには、最適なルアーの一つだと考えられる。



今回の釣行では、ややヘビーな新素材ラインシステムで挑んだ。

理由は、居るであろう1m50cmオーバークラスのタイメンと
70cmを超えるシーマに備えることと同時に、
軽いミノーの遠投が必要だったからである。

数え切れないほどの魚とやり取りしたが、
今回使用したライン
NEWファイヤーラインEXT 25lb
ファイヤーラインクリスタル
25lb
及びファイヤーラインリーダー
30lb
1日通して使用しても、ラインの毛羽立ちも特に無く、
リーダーも割れ等見られず、
なんと
1日交換無しで持ってしまった。

確かにとんでもないモンスター相手に限界のやり取りをしたわけでないが、
40cm〜60pオーバーの数え切れないほどの魚とのファイトともなれば、
それなりにラインに負担はかかるはずだ。

しかし、普通に日本国内でハードに
1日使用した後のラインのようにしか見えないくらいである。

ポイントの状況からかなり軽いミノーも使用したが、
飛距離にも影響ないどころか、キャストコントロールも非常にしやすいと感じた。


ただし、個人的にはファイヤーラインのノットはきちんと練習してほしい。
ファイヤーラインの長所でもあるコシとハリが、
ノットの完成度次第で大きな影響を与えることがある。

ここで完全なノットが出来ていないと、
トラブルになる可能性があるので気をつけて欲しい。
EXTはさらにノットが楽に出来るので、ぜひ使用してみてほしい。


また、今回使用のリールであるカーディナル804も、
数々のドラグを鳴り響かせる大物とのファイトのなかで、
期待通りの働きをしてくれた。

カーディナル804使用時の注意点をあえて言うならば、
ドラグ領域が国産高額リールに比べてやや狭いので、
使用時には的確なドラグ設定を事前にしておくことが特に必要である。

しかも、きちんと自分が使用するロッドにセットしてからのドラグ調製をすることを強く勧める。
それだけを注意していただければ、

十分に価格以上のパフォーマンスを提供してくれるはずだ。

(使用タックル)

ロッド=SOULS TF−J88XHS    

    SOULS TF−J88XHC

リール=ABU カーディナル804

    ABU REVO STX−LHS

ルアー マリア FAKE BAITS 9cm

ボーグ・オスプレイ90 リトル・ジョンHS (オプセル社)

ライン=ファイヤーライン EXT(NEW)

  ファイヤーラインクリスタル  

    バニッシュ・トランジション

リーダー=ファイヤーラインリーダー(NEW)

偏光グラス=ウェップス(フレーム)・オーケー光学(レンズ)

※以下に数枚の写真をアップしましたので、ご覧ください。

※来年はカムチャッカ半島へキングサーモンを釣りに行きます。同行したい方はご連絡ください。

オプセル社より小野寺さんへ転送させて頂きます