オプセル社釣行レポート 2011年2月6日 in 東伊豆



この魚は岸から約10mの位置にあるこの根の左脇中央できました。







魂のこもった鈴木さんの投げ

ノーヒット釣行が続き始めてから、2000回を越えつつあった絶え間ないキャスティングに

SB/Ironの一筋を発見した巨ヒラはこの凪にもかかわらず誘われました

カチカチと人為的な異音のするショアに警戒しながらも興味を引かれ接岸しました



あの岩の水底の脇に身を潜めたのでしょう
食欲を膨らませながらしばらく待機していたのだと考えるしかありません

岩の林に身を隠し獰猛な獣がギラつく眼で上空のアイアンを見ていたということでしょう




ターゲットの引き金を弾いたものは一瞬の小さな変化。
おそらく遠方をゆく船の曳航波が届いたのでしょう
溜まりきっていたSB/Ironへの食欲が静かな海に突如として解き放たれました

そのとき一瞬、少しだけ海が騒いだのです・・・




二年前に磯ヒラに転向したばかりの鈴木さんが去年の春に発見した何気ない小場所

釣行開始は午前9時35分 鈴木さんの第一投はフルキャスティング 彼はいつもフルキャスティング
足元のサラシで食わせるとしても遠投は重要なのです。
魚を引き寄せる回遊ルートが沖にあるかもしれないからですね。
ルアーを見つけてもらえればここまで来てくれるかもしれません。

そしてバイトのタイミングを魚自身に逆算してもらうためにも長い助走距離つまり飛距離はプラスになることが多いと推測できますね。
無風、もしくは追い風ならSB/Ironの飛距離は足りるほど十分なものです。

トゥイッチングが有効かどうかは磯シーバスにおいては不明。彼はコンスタント・リトリーブ派なのです。
といっても着水直後のリトリーブへの移行は非常に早いです。

朝のサラシレベルならまったく問題なく連発させられるファルコン。
カメラを回し期待を込めて第一投開始しましたがアタリはなかったのです。
そのままいつものノーヒットモードに突入しました。

この時点で昨年12月23日の83cm、同26日の50cmクラスの釣果以降年を越してもノーヒットの鈴木さん。
そんな私もノーヒット。
彼のキャスティング数は2000を超えていたようです。


10時半のコーヒータイム
あのアウトドア・バーナー、欲しいです
ごちそうさまです!
そのとき鈴木さんは言いました
「呼んでましたけど今日慶太さん来れてたら申し訳なかったです、良かったです(-_-;)」と。
私もそうだよね、良かったよね、とこの海に二人でほっとしたのでした。
その時点では・・・ですが、


開始から
2時間が経った、11時26分   波はさらに落ちて。。
鈴木さんが写真撮ってくれました(^-^)v こんなボーグ山本もたまにはいいでしょ?


この海ですとシーバスを真剣に狙える人はそう多くないですね。青物ですね普通。というかシーバス狙いできたんじゃまずやめますね(笑)。
ヒット一時間前の海況

後日談ですがスケジュールが合えばその日コラボできたはずのBFT慶太さんも勤務が同じ海の近く、東海岸でした。
海を見ていた彼もその波の薄さにヒットは難しいと判断されていました。
それが普通ですね。

我々とてこの時点でもう期待はなかったんですが懲りないといいますか好きと言いますか・・。
なんかそれでも来そうな感じがしてしまう性格たち。で釣れないまくっているわけですが・・なにか?

でも実はファルコン、この波でも来ることは分かっているので投げ続けられるのですね。
世界記録を出してくれたときの井上友樹さんももう釣りは終わっていた状況でSB/Ironを付けたままのレクチャー中にヒットしたと言ってましたから。




そして上の画像から一時間後

ついにそれは起こりました。



正午を過ぎ、さらに波が落ち、山本はロッドを置き親父に食べさせたいと岩の脇についている貝を剥がしにかかりました。

言い訳です。
不真面目な態度なのです。
しかしきっと皆さんには納得して頂ける状況でした。
だって鈴木さんがまじめなんです!

目立てヤスリに金槌代わりの小岩を当ててカチンカチンとやっている山本。
(この音は魚に聞こえてるだろな、でもいないものな)
→しかしこの音がなんらかのマーキングになっていた可能性もゼロではないかもしれません。




その岩の50cm上の段に立ち相変わらずビュンビュンとフルキャスティングの鈴木さん。
あなたも好きね(爆)なんてつぶやきそうで。。

でも妙な二人組み。
異様なコンビ(爆)。
近すぎる男二人。
その片割れがフルキャスト
で一人が貝はがしっていう(-_-;)


他愛のない話をすくい上げると
まじめに返してくれる鈴木さん
答えの合間に鈴木さん
→「駄目かな(-_-;)今日はーっ、来ないかなぁ!」っとキャストやめません

もうよしましょうか、と何度もいいそうになりました はい
でいっぱい貝とってしまいまして(-_-;)



そうしてまあ平和なお昼の磯をまったりと過ごしていたわけです。






・・・陽が少し翳り、ふと空気が変わりました。

あれっ

振り返ると沖からの船波が寄せたのか少し海が騒いでいました。

鈴木さんも覚えていましたが

「なんか来そうだね・・・」
と山本つぶやきました。


まあ予感とか気配みたいものですかね。
胸騒ぎがしたんですね。

それから5投目

鈴木さんのスパイクがガリッと音を立てました。
同時に「きたっ!」と小さなうめき声が頭上に響きました。
小さい声でしたが異常に真剣な声!

見上げると堅めの11フィートが限界ベンドしてるじゃあないですかっ! なんと

「おおっ!ヒットーっ!」

10m先の水面に二人同時に茶色に艶めくヤバいものを見てしまいました。

っとでかい! めちゃでかい・・! ヒラだっ!
なんてこった

山本は持っていた岩と平ヤスリを投げ捨て隣の岩に飛び移りました
置いていたスタビライザーネットを掴んで戻りました


「来たよーっ、よーし獲るよーっ!
テンション尖らせないようにね
ライン岩に触ったら緩めてねーっ」

矢継ぎ早に声を飛ばす山本

はい、はいっと固めた息を小さく継ぎながら応答する鈴木さん

水深約2m
沈み根多数

水から出た岩頭にはフジツボびっしり
その険しい水路を巨大な平鱸が走りまくる
エラ洗い一切無し。(ランディング後に分かりましたが口の外掛りでした。呼吸は楽で走り放題、水深が浅くて良かったですが深みに潜られたら危険な状況でした)

鈴木さんは糸を根に触れさせないように竿をいっぱいに立てヒットゾーンの外に出さないように耐えています

腕を痛くしたほどのテンションを無視するように軽々と方向を変えてゆく巨ヒラ
根に囲まれたこのゾーンの外に出したら深みに行かれてしまいます

そうなったら左右に大きくシフトされ、貝に擦れてラインを切られる可能性がありました

危険な方向に行かせないように鈴木さんは必死に耐えていました。
ガリガリとスパイクを鳴らしながら細かく立ち居地を変えていきます。

いいよっ、

いいよーっ!

見通しのいい水路に入った瞬間巨大魚は猛烈なスピードでこちらに突進してきました
10センチほど先を沈め、待機していたスタビライザーネットをすばやく引き抜きます
っとぅーす ・・ 間一髪!

ストレートパンチをスウェイバックした感じです

(実はネットは「入れ」よりも「よけ」が難しいのですね。うまい交わしがネットラン成功への鬼門になるのです。
不意な動きをかわせずに口についたフックを網にかけてしまいフックアウト。僭越ながら皆さんやっておられますよね(-_-;)。
意識せずにやれば10回やって10回ミスするのが磯のネットなのです。)

鈴木さんそうこうしているうちに次第にラインを詰めてきました
サーフにずりあげならなんということはないのですがここは地雷原
うまく貝のついた縁を交わし溝をなぞらせて曳航・・・

腕を上げてます

ついに足元にきた巨大平鱸。

凄い。。。

しかし今はターゲットの姿に見惚れていてはいけない

最高を尽くしてバラすなら納得できる

最高の対応は何か?いまやれることはなんだっ!?網だけじゃないぞ・・・・

展開する選択肢、実行オペレーションに平行しもっといい方法がないか探していました。

しかしやはりネット!
ここで決める・・・


脳内メモリーに異次元の光景を焼き付けながらネットを刺すタイミングを待ちました

そしてついにチャンスがきました

山本は絶対に逃さない
こいつは絶対に獲る

超ハイテンションに鳥肌が立ち全身が研ぎ澄まれていきます

魚の走ろうとした先にスネーク・ネットを差し入れました



仰角がネットの奥を活かしきるのです
90overでもずぼっと入るのです

どでかい魚体が枠内に完全に収まりました やった・・・

70枠 枠が上にあり遠近法の視差で魚体はつつましく見えますが・・

「よーし!入った」



鈴木さん、んー重い。
下に入って!

枠掴んで!

一人ならロープであげたでしょう

しかし万全を期しました
といいますか・・鈴木さんに挙げて欲しくて枠を掴んでもらいました

そして

ドライランディング成功!  
→ウェット・ラン(「ずりあげラン」)に対して魚体をタックルだけで空中に差し上げる取り込み。これは「ずりあげラン」に比べて格段に困難な取り込みです。
ほとんどのランカーは「ずりあげラン」で取り込まれていますしドライ・ランはスネーク・スタビライザーを使わない限り成功率が低いのです。


上からちっちゃく山本 → 「重い?」

水際の鈴木さん → 「すっごい重いです!」(笑)

「よっしゃーっ!!」

やったねーっ!
凄いねーっ!
いったねーっ、90超えたね!


あらん限りの嬉し言葉が磯に乱舞しました

実はどっちが何いったかあまり覚えていませんが
もう夢の世界で目をつぶりそうでした


これが鈴木さんの一瞬の気持ちを捉えた画像です 
足元には小貝の入った袋が・・・


これです
これが磯ヒラの予測不能な幸福です





93cmと書きましたがやや斜めでしたね(-_-;)もっとありそうにも思えます。
この長さとボリュームならスポーニング前の昨年の12月末に捕獲していたなら
記録を更新していた可能性もありますね。
その世界記録がまた同じSB/Ironによる記録です。
ファルコンSB/Iron何かもってるかもしれません。



リリースするか持ち帰るか時間を与えられるためにも、ロープ・ストリンガーは必須となるでしょう。
オプセル社で買わなくても作れますからご用意ください
ロープの先に少し尖った硬い棒をつけるだけです。簡単に作れますから自作してください。
絶対はずれないのと、「もしかしたら外れるかもしれない」では全く違うのです。
というのもこの状態のまま魚体を空中に持ち上げてもロープ・ストリンガーは全く大丈夫。顎先のロープ懸架は魚体へのダメージも最小です。
金属のクリップ型ストリンガーはシングルでは一瞬で吹き飛びます。
ダブルで入れても一つづつ飛ぶ可能性があり魚体への係留負担が大きく意味がありません。



ヒットボーグ ファルコン128SB/Iron ブラックゴーストキャンディーRB(鈴木さんオリカラ)
10グラム刻みのスケールが9.00を指すこともかなり来てますね。
20キロまで計れます、正確でお勧めのスケールです。




皆さんにもこんな魚が来るといいですね!
幸運に恵まれることがあるのですから。
そのとき最高のタックルに、最高の弾丸を装てんし、最高の取り込みをやりきってください!

頑張ってください!


オプセル山本






フッキング&遊動フックルアー 雑考

今回のフッキングは強大な遊泳力にさらされるフッキングでした。
呼吸フリー、出血なし、骨格によるダイレクト牽引・・・厳しいパワーが発揮されたのでした。
しかし針伸びもなく針先をストラクチャーに触れさせないクラッチフッキングが狭い牡蠣藤壺の水路を抜けさせてくれました。



フッキング推測

どんな偶然がこのフッキングをもたらしたかは分かるはずもないですが
この位置でも非常に安定した掴みが成立しています。

水面直下のSB/Ironを背後の真下から急浮上した巨ヒラが吸い込みました。
その瞬間、テイルフックが鼻頭の先に乗り、集中している鈴木さんのアワセがジャストミートしてヒット!
一瞬で離脱したユニット。
深く刺さったテイルフックのすぐ傍に降りて来たフロントフックが引き合いの過程で前側頭部に乗り、引き合いでさらに閉じられてゆきました。

フロントフックもさらに針先を沈めながら頭頂部を鷲づかみにして、ボーグ逆クラッチフッキングが決まったと推測されます。



頭頂部へのフッキングは通常ルアーでは針は一本しか掛りにくいのです。
そのまま泳ぎ回って姿勢が変わったりボディーが回転するうちに傷が破れたり針がよじれて伸ばされてしまう可能性が大きいのです。
厄介なことに3本針は小さな魚では問題が起こりにくいのです。
ところが大型が来たときに限って状況は突然変わります。

たとえ複数の針(実質2箇所)が掛っても4キロから先の個体が掛ると針はもちろんルアーそのものが破壊される可能性がでてくるのです。
山本の体験からも言えることです。

棒状のボディーが重くパワフルな魚をしょったまま水中の岩に激突したり岩の隙間にルアーボディーがはさまったらどうなるでしょう?
あの手首を振りほどいてしまうほどの魚体の筋力から繰り出される強烈な慣性衝撃に耐えられずボディーが破壊されたり針が伸ばされ、
バレる可能性が著しく高まります。
貫通ワイヤーは折れることを認めた対応です。
力はボディーを離れたがっているのです。
ならば力の道筋を、ボディーから自由にしてあげるのが優しさではないでしょうか?


機種は伏せますが・・
この画像は2010年クリスマスイブ前夜、私の知人が念願の90クラスヒラを足元で掛けたときに破壊バラしを発生した通常ルアーです。
(yさん画像ご提供いただきありがとうございます。)

完璧なフッキングを見ていたので引き合いでじっくりと仕留めて行こうとしてゆく過程での突然のバラし。
ストラクチャーがないように思えた広い位置の遠方水底で「ガリガリ」っという衝撃と共に突然テンションが抜けてバラし。
回収するとボディーと針を折られた躯体が戻ってきたとのことでした。

明らかに巨大魚の仕業です。
小さい魚では問題は起こらずほんのわずかしかいないスーパーランカーだけでこれが発生しやすくなるという現象。
こういう例は数が少ないので商業的にみれば販売側には問題とならないでしょう。

しかし一人のアングラーにおいては、これは失恋に匹敵する大きな喪失なのですね。
彼が工房に来てくれたときに打ち明けられたこの話は聞いていて辛く、また私もボーグを作るきっかけとなった同じような出来事を思い出していました。

釣りは確率なので絶対はありません。
しかし確率が支配しています。
少しでも高い確率を選ぶのべきなのはポイントの選定からすでに始まっていることなのですね。
ならば予測されるボディー破壊や針伸びという負の確率は取り除き、進化させてゆかねばなりません。

私はそれを取り除く努力をしてみました。
その結果ボーグルアーが生まれ、高いランディング率を得たといえます。

というのもボーグ取り込みではボディーが邪魔せず二つのフックが閉じながら最少の形で魚体に張り付くため障害物の影響を受けにくいのです。
今回のランディング成功は鈴木さんの人生にすら影響を与えたかもしれません。

そして
このランディングに
実はもっとも胸をなでおろしていたのはほかならぬ私だったのかもしれません。

彼にボーグルアーを使ってもらって良かったと思いました。



いつも真剣な鈴木さん


サラシが薄いときにヒット率が落ちる最大の原因のひとつは海中を追ってきたターゲットが岩上のアングラーを発見してしまうことだと思います。
魚が出るところを見たい気持ちは分かります。
しかし見えるということは丸見えに見られていることでもありますね。
こっそり見える程度に隠れてリトリーブしたほうがいいんですね。
鈴木さんはしっかりとそれをやっていますね。
足腰は大切です。













オプセルホームページは釣り場を紹介するサイトではないのですが。
ヒット原因を模索してもらえるスタンスは大切にしています。
情報に惑わずルアーフィッシングの核芯を楽しんで欲しいです。


鈴木さんは大変なテスター活動に応じてくれました。
オプセル社の看板を背負うことになってしまうのですが同時期に参加してくれた慶太さんとともに伊豆の磯ヒラは彼らの活躍に支えられています。
これまでの全国のBFTさんたちと同じくナイスな釣り人たちが本気で釣りを楽しんでいる様子をネットを通して彼も知っていました。
だからBFTを受けてくれたのだと思っています。
このことは彼に聞いていませんが、そのように思ってくれていると思う山本です。

ボーグルアーを理解してくれる仲間たちをボーグマンと呼ばせてもらいました。
彼がキャッチしたこの魚はそんな人たちの輪に導かれたのだとも思っています。
たかが魚
されど時に魚は人間関係を狂わせることもあります。
人の心すら変えてしまう力がありますよね。
人を大切にする彼のような人にこの魚が来てくれたことを嬉しく思います。

有限会社オプセル