ファルコン128SB/Ironについての考察

ボーグルアーのこのバージョンがスローやメディアム速度で多くのヒットを生み出せることは実績されている。
しかし最近になり、広いトップエンドを持つヱスビーアイアンの高速遊泳力がこれまでにないヒット誘発を引き出せることを知った(思い出した)。

「20センチ以内の表層を激しい速度で引く。
サラシ突入でいくらか減速。
ピックアップ直前にサラシの中で2秒ステイ。
これを繰り返す。
やがて沈黙の彼女は耐えられなくなり突然動く。
目の覚めるような素晴らしい泳ぎで体を反転させながらボーグルアーに襲い掛かってくる。」

・・・

前日姿を見せながらもエラノック二発で沈黙していたこの個体はついにこの朝ドッパーンと太い尾びれを翻しボーグを完全にくわえ込んだ。


明るい時間帯における磯シーバスの最終メソッド、「早引き」はSB/Ironの高速性能によって開花し、沈黙ポイントのぶ厚い壁をブレイクスルーする。

そのスピードそのものと、そのスピードに同期して発せられるローリングの周波数、それが彼らに合っていると考えられた。

より早い振動が良いというのなら小型ミノーやバイブレーションを使えばよい。
しかしこれで釣果が得られるケースは意外と少ない。
また、泳動の周波数が高すぎれば視覚の残像効果によってただぼやけた影に見えてしまう可能性も推測される。
(残像効果は魚の視覚にもあると推測→テレビがこま切れなのに滑らかに見えるのはこの残像効果によるもの)
ベイトを盛んに食いまくっていてもワームすら含むすべてのルアーが排除されるなどという事態はよくあることなのだ。
見切り、スレ、は実は手ごわい。




つまり128ミリの躯体のボリューム感、そしてファーストリトリーブの速度、さらにその速度から放出される明滅、そして同じくその泳ぎから水に放たれる波動、
それらが合成され彼ら磯ヒラの本能を強く動かしていると推測。

そのチューニングの合った波動が与える影響力の源はなんだろう?
それは
「御しきれない速度へと進化しようとするベイトへの危機感」
なのかもしれない。

そんなに早く動けるベイトが現れたとしたら・・・?
このSB/Ironという早いベイトが増え、
いやそれどころかさらに小さなシラスを
食いまくりながら増えてゆくとしたら・・?

彼らは危機に瀕するはず。

もちろんヱスビーアイアンは彼らより早く泳げはしない。
しかし「ベイトは制圧しておかねばならない」という彼らの生存に関わる本能を挑発している可能性はある。
もしこの超速SB/Ironを食えなければ、
彼らは食物連鎖の天辺をSB/Ironに譲り渡し、餌を獲れない情けないフィッシュイーターとなり下がり、
やがて滅びるかもしれないからである。


陸ヒラの世界記録魚がなぜこのSB/Ironに来たのか?

釣者井上友樹さんが彼の友人に釣法についてレクチャーしていたときにヒットしたとのこと。
そういうときの常として、もはやヒットの望みにくい時間帯、フィールド状況だったとのこと。

すでに数え切れない通常ルアーリトリーブを受けていたはずのその個体、そのポイントで。

そのSB/Ironのワンキャストがなぜその個体の防御パスを解いたのか?

そこまで大きく成長させた厚い防護壁を突き抜けたパスワード。
それこそがSB/Ironのバイト誘発波動なのかもしれない。
その絶妙なチューニングの中にヒットを連発させる音色が鳴っていたと言う事になる。
私はルアービルダーとしてSB/Ironというバージョンを当初からフラッグシップモデルとして位置づけてはいたが
幸運にも期待していた以上の性能を持っていたことを後に知ることになった。

これは意図して出来上がったものではなく、多くのバージョンが多くのボーグ・マンによって日本各地で使われ続けた釣果データーから逆探査された結論である。
磯平鱸におけるボーグルアーの金鉱脈はSB/Ironの地層により多く埋まっていたということである。


もっとも私は流体メカニズムと生命体の生き生きとした関連性を机上でルアーになぞらえ、安易に構築できるなどとは思っていなかった。
いくつもの可能性を実行した経過で運に恵まれただけである。

そんな後付のコンセプトとボーグ・マン諸氏による多くの実績がSB/Ironをしてシーバス最終兵器の有力候補として認識させてくれたということである






ケース1



2008年11月22日 風波は落ちサラシは小さい。
前日2度エラノックしていった個体とおぼしき平鱸が軽くボーグ(ファルコン128SB/Iron黒金オレンジベリー)をチェックしながら一度だけ姿を見せた。
ルアーを知らないフレッシュな個体ならこの瞬間に完全バイトしていた可能性が高い。
しかしここは度重なる攻撃を受けているハイプレッシャーポイント。
いわゆる「居ても食わない」パターンに入っていた。
沈黙が続く



午前6時30分 超高速リトリーブに変えた2投目・・・サラシの外で水面が炸裂!
太めの尾びれを反転させながら完全バイトフッキング!
通常リトリーブからハイスピードに変えるまでに時間的な間を空けていない。
連続したリトリーブ速度のシフトチェンジである。
このタイミングで偶然そこをフレッシュ個体が通りすがったとする確率は考えにくく、
やはり、やりすごしていた居付きの個体にリトリーブ変化によるスイッチが入ったと考えるべきだろう。



フッキングを見てランを確信。スプールを押さえてずりあげラン。


ラン成功。

フロントフックが下あご中央に掛かり、テイルフックがその左脇をサポート。
ラインブレイク以外にこのフッキングは解けない。
風波が上がり取り込み環境が厳しくなるほどにこのフッキングが威力を発揮してゆく。

しかしクラッチフッキングは外れにくく解けやすい・・・?。
一見矛盾しているが、引き合いの圧力がなくなるとフックをはずすことは容易となる。
仮にラインブレイクしてもラインが短く切れればボディーは消滅しユニットは重い負担にならないため、やがてフックが抜け落ち個体が生き残る可能性は高い。
これは通常ルアーがフックを深くさして取り込むのに比べボーグルアーが深く刺さらない位置でも「つかんで獲れる」からである。
SB/Iron高速リトリーブのバイト誘発力と共に同SB/Ironはボーグルアーでもあり、ランディングのパワーとの相乗効果を組み入れるときもはや磯平鱸ルアーの選択肢から排除する理由はなくなる。



 長さ未計測 平鱸3.83キロ



このヒットの5分前、小型ヒラも陥落。

追記 スレていないポイントではSB/Ironのスローやメディアムリトリーブが最適となるケースも多いです。



ケース2




2008年11月19日 伊豆西海岸 ファルコン128SB/Iron黒金オレンジベリー 超ファーストリトリーブに来た磯平鱸80cm,5.18kg

連続する食い損ないからの掛け損ないによって起こるスレ状態。そこから完全バイトを引き出す最終メソッド・・それはシン・ペンのポッピングでもバイブレーションでもなく的確なコースを切り裂くSB/Ironの超ファーストコンスタント・リトリーブ。これにより窮地を脱した経験は数知れない。サラシの引き波に負けないSB/Ironの高速性能が今日も魚を連れて来てくれた。


80cm5.18kg


ランディング時に岩に触れて伸びたテイルフックの露出ゲイブ


新開発のロープストリンガーで確保

文と釣行   開発者